私は家族4人で22年間アパートに住んでいました。6畳2間の小さな部屋でした。
私が中学1年生の頃、父は病気になり職を失い、母は家族の家計を支えるため朝から夜までずっと働いていました。しかし生活は苦しく、電気やガスが止められることもしばしばありました。
やがて父は元気になると印刷工場で働き始めました。
冬休みになると父がストーブに灯油を入れ、母がヤカンを置く。久しぶりに6畳の部屋が暖かくなり家族でテレビを見ながら、父は日本酒のワンカップ片手にはまちのお刺身。
母は上機嫌で聞きました。「貴光、貴浩ご飯どれくらい?」
私が「普通」と言うと運ばれてきたのは大盛りのどんぶり。弟の貴浩は驚いていましたが、家族で食べる手作りの煮物の味は忘れられません。
他にも料理がでてきましたが全てなくなり、食べ過ぎて体が動かず笑顔になりそのまま眠ってしまいました。
久しぶりに一緒に食事をして、一緒に笑って、一緒に寝た。狭い部屋だったけれど家族と過ごした思い出が詰まった空間です。
たしかに家は大きくて住みやすい方がいいと考える方は多いです。ですが、その家族とその思い出ができる空間に大小は関係ないと私は思います。
一番大切なのは家族と一緒に過ごす空間です。