私が中学一年生の頃の話です。当時6畳2間のアパートに家族4人で住んでいました。
親父はトラックの運転手でしたが病気で職を失いました。母親が私たちの家計を支えるため朝も夜も働きますが、生活が苦しく電気やガスを止められることがしばしばありました。
私はそのうち学校を休みがちになりました。
ある日、家のインターホンが鳴り玄関のドアを開けると担任の大野先生が立っていました。
大野先生が「なかじ(愛称)、明日は学校にくるんだよ。みんな待ってるよ」と言って持っていた手さげ袋からサランラップに包まれたおにぎりを2つくれました。
私は「大野先生、ありがとうございます」と伝えました。大野先生は笑顔で「なかじ、それじゃ明日ね」と言って中学校へ戻って行きました。
私は先生の気持ちとおにぎりが嬉しくて明日学校に行くことにしました。
その日の夕飯は大野先生がくれたおにぎりを弟と1つずつ分けて食べました。食べてみると梅干しの入ったおにぎりでした。弟は私の隣で「お兄ちゃん、おにぎり美味しいね」と笑顔で食べていました。食べ盛りの私はおにぎり1つで空腹は満たされず、長い夜を過ごしました。
次の日学校に行くと大野先生が満面の笑みで「なかじ、来たね」と言い、私の髪の毛がぐちゃぐちゃになるほど頭をなでてくれました。その時、自分の存在がとても嬉しくて泣きそうになりました。
私はこれまでたくさんの人に支えられながら一生懸命に生きてきました。
笑顔のある暮らしは本当に幸せだと日々思っています。
私はこの仕事を通してこれからも地域の人達の笑顔を創っていきます。